「代金支払」と「所有権移転登記」は同時履行の関係というけど
Q、お金を受け取ると同時に「移転の登記」ってできる?
「同じ時」にはできないが、同日にはできる。
お金を受け取ると、同席していた司法書士が席を立ち、所有権移転登記の書類を持ってそのまま登記所に向かう。2~3時間後には登記ができる。
目次
同時履行できる? 平成27年問8.ウ解説に疑問が…
宅建テキストの「債務不履行と解除」の章では、
お金を受け取ることと、所有権の移転登記をしてあげることは
同時履行の関係に立つ、
とありますよね。
しかしこれって実際は、同時にできるんですかね?
登記をするなら、登記所に行かなきゃいけないわけですから、ウン千万の大金を持って登記所内の部屋で受け渡しをしなきゃいけなくない?
売主と買主、みんな登記所に集まってるの?
ということで調べてみました。
「同時」にはできないから、せめて「同日」にしている
「同時」はムリだそうです。
そもそも、代金の受け渡しは通常、不動産屋さんか銀行に集まって行われるそうです。登記所ではやりません。
代金の受け渡しの場には、売主、買主、間に入ってる不動産業者、司法書士、銀行の人、たちが同席します。(ローンを組む場合は銀行の人もいる)
例:銀行で同時履行する場合
わかりやすいので、たとえば銀行で代金の受け渡しをする場合で説明します。
この日までに、不動産業者や司法書士が、所有権の移転登記のための書類を準備しています。
必要書類が用意されているのを確認すると、買主がお金を振り込む手続きをします。
ここは銀行ですからその場で入金を確認できます。銀行員が受領印を押した振込伝票を持ってくる。
確認を終えると物件の引渡し(鍵を渡すこと)を行い、所有権移転登記の書類に最後の記入をして、司法書士が立ち上がり、近くの登記所へ走ります。登記所の場所にもありますが、だいたい2、3時間後にはできるそうです。 参考:振込と所有権移転は同時に可能?
同日中に買主は物件の登記を得られることになります。
関連記事:【宅建】違いで覚える「契約」と「引渡し」と「移転登記」。同じ意味じゃない?
あ、問題文をよく見たら、移転登記に「協力する債務」と書いてあった。
ということで、「現実は、代金の支払いと移転登記は同時に履行できてないじゃん」
「同時じゃないやん! どうじつやん!」
「できもしないこと書いて混乱させじゃねぇ」とつっこんでいたのですが・・・
ふと該当箇所を読み返すと、テキストにも過去問に
「代金の支払いと移転登記が同時履行の関係に立つ」なんて書いてない。
あるのは「売買代金支払い債務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、同時履行の関係に立つ」という文章です。
もう一度みます「売主の所有権移転に協力する債務は」
・・・「協力する債務」
なんだこれは。
確かに、お金を受け取ったと同時に所有権移転はできなくても、
買主はお金を払うことで「所有権移転に協力」をしている。
「売買代金支払い債務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、同時履行の関係に立つ」
という言い回しは、どこもおかしくないということになる。
同時に履行することはできます。
ということがわかる過去問がこちらです。
平成27年問8.ウ はひっかけ問題か?
Q、マンションの売買契約に基づく買主の売買代金債務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、特別の事情のない限り、同時履行の関係に立つ。
〇か×か?
平成27年問8.ウ
答え:〇
たしかに代金を支払った瞬間に、所有権移転登記をしなさいとは言ってない。登記できるように協力してくださいといってる・・・
登記所で代金を受け取る人もいる
むかしの話ですが、登記所に関係者を全員集合させて引き渡し手続きする猛者もいたそう。
買主には代金を現金で持ってきてもらい、その場で確認。そこで初めて、移転登記の手続きをしました。
金額が高額ですからそれぐらいやってもおかしくないですね。