地味ランニングの記録と雨の東京マラソン

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イタリアではコロナの影響で外でのランニングが禁止されているそうだ。日本ではまだそこまで禁止はされていないが、このような事態ではランニングができる環境に感謝の気持ちが出てくる。

でも自粛中だから外に行くの気が引けるので、脳内でランニングでもしようかと思ったけどやめた。私のランニング中はたいてい何も起こらない。頭の中でランニングを妄想したところで地味な結果になるだけだ。

これまでのランニングを思い出してみても、じゃあ何があったとも思い出せない。草むらのわき道を走ってる時に足元にでかいバッタに遭遇したことぐらいか。驚いてこちらが大きく跳ねてしまった。その時は足がふらふらだったのにまだ自分にそんなに跳べる余力があったことに驚いた。もっと早く走れるのだろうか。

大きなガマガエルがいたこともある。これにはぎょっとして後ずさりした。踏みつけなくてよかった。

見かけたといえば、夜に歩道を走っていると車道のど真ん中に黒い何かが落ちているのを見かけた。嫌な雰囲気がする塊だった。私は猫が大好きなのでこの黒い何かが動物だったらつらい。行きかう車はそれを轢かないように通り過ぎているが、わざわざ降りてどかすわけにもいかず、運転している人からすると心配だろう。素通りしようか迷ったが、あたりには私しかいない。

意を決して近づくと、その黒い何かは、黒いサポーターだった。腰にまくサポーターベルト。なんで道の真ん中に落ちてるんだよ。ハラハラさせないでよ。そのへんの植え込みにそっと置いておいた。

ランニングの何が地味って、ひとりでドキドキしてひとりでがっかりして終わることだろう。

あとは、10年前からジョギングで履いているズボンがずり落ちるようになってきて、数メートル走りながらちょくちょく引っ張っていて、このところ走るのに集中できない。

ん? なにこの話? もう走らなくてもいい気がしてきた。

 

私の走りは地味だが、そうでない人が世の中にたくさんいるのは知っている。

去年は東京マラソンを間近で見ることができた。コースは職場のすぐ脇の大通り。出勤日だったので昼休憩を使えば観戦することができる。その日はもう出勤前からソワソワしていた。

大雨だったがすごい熱気。レインコートを着て走る一般ランナーの大群はすごかった。近くで見るとなかなかのスピードで迫力がある。

驚いたのは観客の応援だ。ひときわ目立ったのはスポーツジムのロゴが入ったジャンパーを着た団体で、のぼりをはためかせ大きな声援を送っている。一般人は「ファイト―」「がんばれー」」ぐらいだがこの集団は違った。

「自分との闘いだ!!」

すべてのランナーに向けてメッセージを送っている。すさまじい熱量。

「雨に 負 け る なー!」

ほぼ絶叫しながら全力の応援。

「今日まで頑張ってきたんだろー!」

よくここまで心の響くフレーズ思いつくなと感心。応援する本人は走ってないのに。

「ゴールまであと少しだぞっ!!!」

それは違う。だってここ、全然ゴールまで遠いポイントなんです。頑張ってる姿を見ると熱が入るんだなあ。

 

大会を支えるのはこんなふうに派手な人だけではない。

この日は交差点を封鎖しているから移動の規制も多い。コースから離れた地下道への入り口の前には「この先通れません」というプラカードを持った若い兄ちゃんが立っていた。白いレインコートで傘もささず、雨に打たれてプラカード。先程の熱狂が嘘のよう、この人のまわりだけが静寂に包まれている。悟りの境地なのか、お兄さんの表情は無だった。なんだかこの若者こそが「大会の光と雨」というアート作品にも思えてくる。

一瞬、にいちゃんと目が合う。私は不覚にも「プラカードを一日持つ仕事とは。あんたもついてないねぇ」という顔をしていたところだったので気まずかった。はるか遠くからマラソンの歓声が聞こえる。お兄さんは大会ボランティアにでも立候補したのだろうか。彼はもしかして選手のための水を用意したり、沿道の観客を抑えこむような派手なパフォーマンスを夢見ていたのかもしれない。

大会はこのような地味な仕事のおかげで成り立っているのだ。この役回り、他人ごととは思えない。「その気持ち、わかるよ」とせつなくなってきた。がんばれお兄さん。

 

ちなみにあんなに見たかった東京マラソンだが、1時間ほど眺めていたらだんだん飽きてきた。知り合いもいないし。私の方こそ、「東京マラソンを応援するのに飽きた人」というオブジェになってもおかしくない。私はしれっと職場に戻った。やっぱりマラソンは応援するより走るほうがいいな。あんなに東京マラソンを間近で見られるのを楽しみにしていたのに。げんきんなものです。

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