【エッセイ】神楽坂で肉まん食べてたら店番をサボりおやつする看板猫に会えた

神楽坂は素敵な街である。料亭が並び、気軽に入れるおいしい店も多い。かつて私も名店の肉まんを買って食べた。リア充みたいな一日を過ごしたことがある。

神楽坂を散歩中、猫があらわれた

大きな肉まんで、友人と半分ずつ食べることにした。

裏道に入って小さな公園を見つけ、椅子に座った。街ぶらしながら公園の肉まん。下町散策っぽい。OZマガジンで紹介されそうな一コマであろう。

浮かれているところで、後ろから猫がやってきた。

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首輪をつけているから飼い猫だろうか。われわれ人間がどーんと座っているのに気にも留めず、後ろの草むらに入っていく。

「猫が来た!」

神楽坂の住宅地にも野良猫がいるなんて。たまたまた訪れたこの日に遭遇できた奇跡におもわず感動の声を挙げてしまった。

猫はよほど慣れているのか、すぐに草をかじり始めた。顔を傾けながら、むしゃむしゃ緑の草を食べている。

おやつかもしれない。確かにこの季節、この公園の草はフワフワしておいしそうだ。栄養もありそうな気がしてくる。

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険しい顔で草を食べる猫

物珍しさにひたっていたのも束の間、しばらくすると猫は我々に背を向け、ゲエゲエとおかしな声で泣き始めた。

神楽坂の猫はかなりハードな声で泣くのだなと一瞬感心する。これが神楽坂の猫文化なのか。何もかも珍しい。

あくまでマイペース。公園で食事を続ける猫

しかし、よく見ると猫はゲエゲエ吐いていた。

体全体を揺らしながら思いっきり何かを吐き出している。我々は一瞬無言になる。

・・・猫はしばらくゲホゲホ、ゲエゲエやっている。けっこう長い。だんだん心配になってくる。

猫が吐く音を聞いていると、楽しく食べていたこの肉まんも次第に微妙な味に感じてくる。あれほどおいしかった肉まんも、さすがに猫のこんな音には負けてしまう。

おまえ、営業妨害だろ。美食の街・神楽坂の観光協会に訴えられるぞ。風情も何もない。神楽坂名物の肉まん屋さんにだって怒られるぞ。OZマガジンだって文句を言ってくるぞ。と猫に念を送りたくなってくる。

それにしても、一体そんなに吐き出して大丈夫なのか?

しばらくして吐き気も落ち着いたのか、またしても公園の草をむしゃむしゃ食べだした。けろりとしている。おやつ再開。まるで何もなかったかのように。

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おやつを再開した猫

我々もまだ肉まん食べてるんですけど、と思った。

「草を吐いてしまって不快な思いをさせてごめんなさい」とかないんですかね? せめて「にゃあ」とか一言ないんですかね?

猫様は、おいしい、おいしい、という感じではなく淡々と食べている。無表情。可愛らしい首輪とこのシュールなギャップが地味に気になる。この毎日が猫にとっては日常という感じ。ワレワレハこの公園でいつも草をタベテイマス、何か?という感じ。それから猫はどこかへ行ってしまった。残された私たちは「猫、行っちゃったね・・・」とつぶやくのが精いっぱいでした。

この猫さまは有名な猫だった・・・!

その後、ふとネットサーフィンしていると思わぬところでこの猫と再会することになった。

神楽坂で猫と会える、という店があるのだが、そこの猫の写真を見た時、「あーーーっ!」と気づいた。

この子である。目を疑った。

確かにあの公園の近くの店である。どうやら有名な猫らしい。

まさか。そんなに良いとこのコだったのですかあなたは。

それとも、あれは観光客は決して見てはいけない姿だった気もしてきた。昼間の、接客に疲れ、店を抜け出し、サボっているところに遭遇したのだろうか。

やはり接客って疲れるのだな。小さな公園の裏でゲエゲエ吐くなんて、まるで店の裏で飲みすぎた酒を吐くキャバ嬢みたいである。人間も猫も同じ。裏の顔を見てしまった。

神楽坂の名物猫もつらいのだろうか。がんばれよ、猫。(名前は知らない)。

君のあのふてぶてしい感じ、悪くないと思うよ。

 

神楽坂に行きたくなったきっかけは能町みね子さんのエッセイでした。

神楽坂の風呂なしアパート「加寿子荘」で暮らしていた能町みね子さんと、大家の加寿子さんの交流が描かれています。

まだ無職だった頃、部屋でごろごろしていた能町さん。不意にやってきた大家さんに家賃を催促されるも、すっかり忘れていたとは言えず、素直に謝れなくて、とぼけ続けるエピソードが大好き。

矢部太郎さんが「大家さんと僕」を書く際に影響を受けたという作品です。

 

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