宅建テキストでサラッと書かれた一文。
「Aが所有する甲土地をBに売却し、その後Cにも売却したとしましょう。
これを二重譲渡といいます」
ひとつの土地を同時に2人に売る・・・!!!?
絶対ダメでしょと心は叫ぶんですが…
「いいんです。 その場合にどちらが土地を手に入れるかは~」
と普通に説明が続きます。
え? そこスルーする? ・・・気になる私がおかしいのか。
ということで必死で調べました。
どんぴしゃな説明が見つかり非常にスッキリしました。
二重譲渡は「民法」では認められているが、刑法上は犯罪。
横領罪や背任罪にあたる。
民法と刑法で扱いが違う、ということでした。
二重譲渡は犯罪なんですね。刑法で裁かれるなら安心しました。
宅建の試験範囲は民法だけなので省略しているのでしょう。
たしかに民法では「二重譲渡してもいいよ」と言ってますよね・・・
二重譲渡は頻出論点です。債権譲渡、物権変動、意思表示・・やたら出現する。
これからは学習するとき
「ちなみにコレ、刑法上では犯罪だから!」 と唱えることにします。
目次
刑法上では犯罪
詳しいサイトを見つけるのにすごく苦労しました。わかりやすいです。
<不動産の2重譲渡による横領罪>
不動産を別の2人に重複して譲渡することは,民法上は認められています。しかし刑法では,原則的に,自己の占有する他人の所有物を処分したものとして,横領罪が成立します。
2重譲渡や2重抵当は刑法上,横領罪や背任罪が成立します。
一方,民法上は,対抗関係として,対抗要件の状況によって権利の帰属が決まることになっています。
要するに,民事と刑事で完全に別の扱いとなるということです。
なるほど。弁護士さんがいっているので間違いない。納得できました。
宅建士が民法で「二重譲渡」を学習する理由は?
詐欺師が刑法で裁かれたとしても、その事後処理がありますよね。「で結局、どちらが土地を手に入れるのか?」
二人とも被害者です。可哀想な二人にどうやって順位をつけるのか。
ここからが民法の出番なのでしょう。登記や対抗要件で土地の所有権をフェアに判断する。
特に二重譲渡は民法のルールも複雑で難しい案件になってしまうそう。
具体例は? 二重譲渡は身近なトラブル?
ということは宅建業務で頻繁に遭遇するのでしょうか?
実在の被害事例では、民法の〇〇法違反?で被害者は損害賠償を請求しているようですね。
農地の二重譲渡
見つけた具体例です。
【農地の二重譲渡】
相談:Aから農地法上の許可を得て農地を購入しましたが、その際に所有権移転登記をしていませんでした。その後、Bが農地法の許可を得て土地登記を済ませたとして土地明渡しを求めてきましたが、応じなければならないのでしょうか?
解説:Aからはじめに農地を購入したものの自分の名義にする前に、Bへの登記がついてしまったというケースです。いわゆる二重譲渡の典型であります。~
~売主は契約違反をしていることになります。そのため、売主に対して損害賠償の請求は可能であります。
「二重譲渡の典型」としていますが、農地は二重譲渡って頻繁にあるんですかね。ノリで決めちゃうものなのでしょうか。無法地帯?
続いて、判例でみつけました。
古いですが二重譲渡の判例もありました。
【不動産の二重売買と横領罪】
福岡高裁昭和47年11月22日
判旨
「…単に二重譲渡になることの認識を有していたのに止まらず、二重譲渡になることを知りつつ敢て…執拗且つ積極的に働きかけ、…売買契約を締結するに至らしめたものであるから、Xの本件所為は、もはや経済取引上許容されうる範囲、手段を逸脱した刑法上違法な所為というべく…横領罪の共同正犯として刑責を免れえないというべきである。」
全部他人物売買よりたちが悪い
似たような危ない取引だけど、民法が認めているものに「全部他人物売買」があります。
ただしこれは、買い手は一人ですし、買い手を見つけて土地をきちんと売り渡すことができれば、
「終わりよければすべてよし」「誰も不幸な人はいない」になりますので、まだビジネスとして成立してます。
一方、二重譲渡は二人に「売るよ」と言っておきながら結局どちらか一方しか手に入らない。最終的に不幸な人がでるので救いようがありません。
まとめ
二重譲渡は刑法上の犯罪にあたるが、民法では認められている。
試験で頻出なのは「犯罪に巻き込まれた場合の事後処理の学習をしましょう」という主旨かもしません。
これで本来の試験勉強に集中できます。