過去問を解いてたら、気になる文章がでてきました。
宅地建物取引業者は、抵当権に基づく差押えの登記がされている建物の賃貸借を媒介するに当たり、
貸主から当該建物の差押えを告げられなかった場合は、
法第35条に基づき借主に対して当該建物の上に存する登記の内容を説明する義務はない
〇か×か?
解答:× 義務がある
ここです。
こんなシチュエーション実際にあるんでしょうか。
わざわざ「差押え」登記のある建物を借りる人っているの?
すぐ退去しなきゃいけないかもしれない物件に契約するけ? そんな人いる?
ということは、もし不動産業界に就職したら、「差押え」の登記がされている建物を人に貸す仕事をしなくちゃいけないのか?
わざわざ試験に出してるわけですから、これは実務ではよくあるケースで、差押え建物を借りると実は得なのではないかと思い、調べてみました。
差押えられる建物を借りる人って、実際いるの?
⇒いる。
(差押え物件と知らずに契約してしまった人。業者に騙された人。)
トラブルにあった人の話でした。
注意喚起のために出題している問題のようですね・・・
それでは、調べたことを書いてみます。
目次
「差押え」登記がある建物は借りてはダメ
そもそも、借りようと思った部屋(建物)に「差押え」の登記があった場合、普通は契約しないんじゃないでしょうか・・・。 危険信号出てますもんね。
不動産業界や弁護士さんも、こういう物件は後々にトラブルになるので契約しないでくださいといっています。
特に競売の開始決定がなされているもの(裁判所による差押の登記がされているもの)については、契約を避けるべきでしょう。
「競売」されたら退去
なんでダメかって、まず差押えの登記がされているということは、いずれ競売にかけられて売りに出されてる可能性があるわけですよね。そうなると部屋を出て行かなくちゃいけない。せっかく苦労して借りたばかりなのに。
中には「今すぐ、今日出て行け!ってわけじゃないし、別にこの部屋でいいや」という人もいるかもしれませんが、面倒ですよね…
大家さんが借金まみれ!?
それだけじゃなくて、「差押え」の登記がついてるということは大家さんが借金の返済ができてない、お金に困っている状態なわけです。建物がボロボロでも修繕してもらえなかったり、敷金を返してもらえなかったり、今後のトラブルが予想されます。
ちなみに、アパートを建てる時に銀行や国からお金を借りることは多いので、「抵当権」がついている物件は珍しくないそうです。問題なのはさらに「差押え」の登記がある建物。
危険な「差押え物件」、なのに借りるのはどんな人?
でも、実際に借りてる人がいるんですが、どんな人かというと大体が「知らずに入居した人」なんですね。業者が契約の時に「この建物差押えられてますよ」と説明してくれなかった、、、違反業者にあたってしまった人です。ついてない。
例えば、大学に入るため部屋を借りて住んでいたら、「〇カ月後に出てってください」と急に連絡が来る。この時初めて、建物に差押え登記があったことを知るわけです。
他にも、ラーメン屋を開くため、素敵な店舗を見つけた。店が順調な頃、差押え物件であることが判明。さらに競売にかけられて、引っ越しを余儀なくされたケース。
普通は素人ですから、借りる時に「登記事項証明書を見せてください。権利はどうなってますか?」なんて言わないし、知らないですよね。業者を信じるのが普通です。
なぜ、業者は「差押え物件」を契約時に教えないの?
悪質な業者
まず、儲けるために、あえて教えない悪質な業者がいます。お客の無知につけこんでいるわけです。
適当な業者
一方、差押え物件であることを本当に知らない業者もいます。といいますか、面倒だからとそもそも登記情報を調べてないんです。
お客さんが借りたいというと「まさか差押え物件じゃないだろう」と重要事項説明の所有権の欄を「無」と記載し、契約を成立させてしまう業者。いい加減ですね。後で判明して、余計面倒が起きたりします。
効率重視の業者
続いて、売買よりも賃貸は取引金額が安いから、登記調査は契約直前にやる、という業者。
賃貸では、数百件の物件を扱うので、いちいち登記の確認なんてしていられない。登記事項証明書を1件取り寄せるのだって700円かかります。何件も調べたらかなりの金額になりますよね。
それに登記情報は変わってたりするので、契約するかわからない物件をいちいち見るのもなぁ・・・ということらしい。
だから客に部屋を案内している時は、業者はその部屋の登記情報を知らない、なんてこともザラにあるそうです。いざ契約となって、登記情報を取り寄せると・・・差押えの登記がついてた。それで慌てて客に説明することに・・・というのが実情だそう。ちなみにこうなった場合、お客さんは契約を断ります。
客としては「そういう大事なこと、契約直前に言うなよ!」と思うかもしれませんが、まだ素直に教えてきただけで良心的な業者といえるそう・・・ひどい時は、知ってても客に伝えずそのまま契約させます。
客は業者を訴えることができる
業者が黙っていたせいで、「差押え登記がある物件」に入居してしまった、さらに引っ越し費用がかかった、という時は客は業者に損害賠償を請求できます。
例:かつてラーメン屋さんがすぐに退去しなければならなくなった。業者に損害賠償を命じたケース
だから生まれた「謎の過去問」
しかし、契約前に登記情報を説明しないことは宅建業法35条の違反になります。
この規則を徹底させるため作成され、出題されたのがこの過去問ということでしょう。「そんなやつおるけ?」と意味不明な文章の理由がわかりました。
宅地建物取引業者は、抵当権に基づく差押えの登記がされている建物の賃貸借を媒介するに当たり、
貸主から当該建物の差押えを告げられなかった場合は、
法第35条に基づき借主に対して当該建物の上に存する登記の内容を説明する義務はない
〇か×か?
(平成15年 問37肢4)
答え:×
登記の内容を説明しなければならない。
もしかしたら差押えから競売されて部屋を出なきゃいけなくなるかもしれないから
どうやら、「抵当権に基づく差押えの登記がされている建物の賃貸借を媒介するに当たり、」とは、
という意味ではなく、
という問題なんですね。
まとめ
業者は忙しいので、登記情報を知らなくても、まず部屋を案内し、契約前に調べ直すという方法をとることもあると知った。
参考にさせてもらった記事↓ おもしろい内容でした。
https://realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/14120375659/
https://fudousan-chiebukuro.com/torihiki-taikenki/2544.html